2015春のセミナー

「大学入試改革」のねらいとゆくえ

全進研春のセミナー2015

テーマ「大学入試改革」のねらいとゆくえ

会場 武蔵野プレイス 2015517

記録:安部

世話人代表綿貫さんよりあいさつ:

・1963年から始めている。歴史は古い。その時のテーマに合うことを話し合っていこうということでやっている。

・議論がないままに進められている政治状況に、本当にいいのか、見過ごすことはできないと考えている。

・中学、高校、大学色々な関係者がきている。実りある時間にしたい。

・資料の中に「君の行く道は」を配布してある。自分の教えている大学の学生が書いたコメントが載っている。総じていえば大学生の感覚は現状維持。という意見が多かった。

 

●報告①改革案の中味と問題点・中学校の現場から(中村岳夫さん・都内公立中学校教諭)

・中野区で中学の教員をしている。

・資料「報告1」を見ながら。日本経済新聞より。「1点刻み」でなく、ABCDのような評価をしていく。「センター試験がなくなる」。知識に偏りすぎた。多面的に、人を選ぶ評価にしろ、ということ。

・「学制」以来の大改革を目指す~文科大臣下村博文。

・社会を統治するだけのただの道具だ。と言っている。

・安西教授「一体的な改革」。

・「自ら学んでいく能動的学習、アクティブラーニング」どこから出てくるのか。

・企業が期待している学生をどう育てるかということが、根底に流れているのでないか。

・「グローバル人材」「イノベーション人材」企業側の論理で、中教審の会長になった者が、産業界の意見を受けている。

・それらの中でメモとしてまとめたものがレジュメ。「行動規範」とても曖昧なもの。

・肉体的精神的体力の鍛錬。うつ的な症状が出る人を鍛錬が足りないよといっているのか

・高校に「指導要録に観点別」を入れろとある。これが入ると、高校の教育全体を苦しめるだろうと想像できる。

・教育自体がどのように変えられようとしているのか。私たちは見ていかないといけない。勉強会を通して冷静な見方をしていかなければならない。

 

●報告②高校の進路教育の現状と課題・高等学校の現場から(諌山和可さん・前都立高校教諭)

65歳を過ぎたが、現在も私立高校で教えている。独自にキャリア教育を進めていた。

・団塊の世代。大学紛争があった。当時は偏差値で進められていた。進路指導はなされてなかった。自分が教員になった時も進路指導ほとんどなかった。

・石原都知事が就任してから変わってきた。

・小山台高校では。基礎学力をつけていくこと。進路に向けた指導。キャリア教育。キャリア教育とはどんなところで働きたいかを考えさせること。

・大学は国公立を目指す。私立は目指さない。

・クラブ活動や行事さかん。クラブに入っている生徒、100%に近い。

1年生ではキャリア教育。2年生大学どこ行くか。3年生実際に進路決めていく。

・外部から講師を招き、生徒が興味ある講演に自主的任参加することで力をつけていく。

12年で基礎学力つけていけばあとはhow-toの問題。変わっていっても対応できる。

・サテライト教材は同窓会のお金。

●まとめの講演 大学入試改革のねらいとゆくえ (松田洋介さん・金沢大学准教授)

・現在の大学をめぐる状況。1998年を境に高校新卒者の求人数が減った。そのことで4年制大学進学者急上昇。

・学費は高いまま。

(資料を読み解きながら。)

・私立推薦、AO入試の合格率高い。

・大学入試が分断。

・大学は経営のために競争的資金をとっていかなければならない。金沢大学も微妙な位置。なんとかエリート大学としてのこりたい。

・教職員が精神的にまいってきたときの対処の仕方。出席の際、カードを通す(ピッと)。そのピッがなかったら、その名簿が学部長に行く。

・現在の大学政策の合理性はあるのか。時間予算が確保されていない状況がある。

AO入試で入ってきた者より、一般入試で入ってきた方が力がある。

・センター試験等で試験を何回かに分けて受けられるが、複数回テストで逆転は起こらない。

・アクティブラーニングで、全員手をあげさせよう。そのために最初簡単な質問をする。など?

・日本の良い所か悪い所、子どもたちの進路をみんなで決めよう。というのがある。

・教育評価と教育評価がどう外部評価されるか。

 

●参加者(30名ほど)

中学関係、高校関係、大学関係、学生

●質問

・色んな企業の要請から今回のような改革が行われているようだということは分かった。これでいいのか、大変なことになるか、考えを聞きたい。

・学力で言うとPISA型学力が思考している。批判はあるが、そういう所を狙っているのか。考えを聞きたい。

中村

 私も知りたい。今までの学力はダメだと認めている。本気でどこまで認めているのかというと、一部の大学、超エリート学校では効力があると思う。

佐藤氏はアクティブラーニングがアクティブだけが動いて、中身がなくなる気がする、と言っていた。

 

諌山

 社会が求めている学力も産業が求めている力も、対応力があってなど、その点は同じだと思う。

 

松田

 知識肥満型社会。知識が重要視されていない。歴史的知識が軽視されているような。

 多様な観点とはなんだ。京大チームが出している学力、権力性などに無自覚な印象がある。むずかしいところ。子どもが生き生きしているか、そうでないかだけだと心配。誰にも判断できる技法を、私たちが研究していく必要がある。

 

松田

 ワールドカフェとか社会のこと議論してとそれなりの問題意識はあるし、やらないよりはいいのだが。

 

・キャリア教育をしていて子どもたちがどう変わったか。育っているか、詳しく聴きたい。

諌山

 進路部長は女性で、勉強に行ったりしている人。河合塾のガイドラインなどを知っていった。

 AOはあまり進めていない。基本は探求型、自分で選んでという所を大切にしながら、一般受験で力をつけてというようにやっている。

 

綿貫

指定校枠を並べて、高校は通過点ですと言う校長先生がいたが、そういうことはやらないということですね。

 

・都立高校は競争させられている。

・学校説明会で指定校推薦を表したことがある。教育学をやりたいという生徒がいたら、いい先生がいるところに行けばいい。目的をどこに置くかというという点で推薦を否定してはいけない。

・自分の将来の職業意識が深まったのだろうか。

 

諌山

 推薦は禁止しているわけではない。受験は団体戦だという。教育でなく受験という流れになっている。

 

・なんとなくゆとり教育が始まったときの動きと似ていると感じる。あのときも「主体的な人間をつくろう」という流れがあった。振り子のよう。また数年後基礎力学力を求める動きになると思うのだが、ご意見があれば欲しい。

 

中村

 学力論が振り子のようになるというのはあると思う。今回スピーディーにいろんなことがある。明治以来の大改革と意味をもう一度考える必要がある。御上が作る動きに、私たちがより広い視野で見ていかなければならないのではないか。

 コミュニティスクールも、教育委員会が命じたものが、学校長の応援団にするという動きであった。

 

・和歌山大学にいたら、参加しなかったテーマだったと思う。武蔵野市はまつしたけいいちさんのゆかりのある場所。ひっかけているわけではないが、改革の問題を国民が話し合っていくことが必要。焦燥感にかられた政策に引きずり込まれてはいけない。大学全体で話し合っていかなければならないのに。

 日本経済界自身が翻弄されている。1点刻みはもう存在しない。センター試験側は20年間やってきたことをなぜ否定されるのかと思っている。

 日本は高度な教育をやってきたのに、格差社会を容認するということを考えているのか気を付けて見ていかなくてはならない。

 

・金を出さないでできるのか。全部を含めた議論をしていかなければならない。高校関係もまだ動いていない。そういう場を作っていかなければならない。

・会社員。動きが就職活動っぽいというように感じた。

 

綿貫

もう一度テーマに立ち返って話をしてほしい。

中村

 アリのいっけつ、を探る部分。そのことで、それを動かすことで教育全体を、、、。教師である前に教員なんだ。将棋の駒にされてしまう。そう意識を持って現場で足を踏ん張っていかなければと思う。

 

諌山

 全体のことはいえないが。高校の授業は全部英語でやれと言われていた。が現場から反撃した。我々の持っているもので反撃していくこと、これからもあるのではないか。

 

松田

 専門の自治は守らなければならないが、不満や批判を受け入れつつ、教育運動が必要なのだと思う。

 

今泉(世話人)より

 入試の問題はある時期のものと捉えられがちだが、小学から中学高校まで一貫して考えなければならない。ミクロの視点で見ていかなければ。

 高校生が現実の労働を知ること、大学が資金を競走していかないとやっていけないこと、などサケと同じように逆に上がっていこうとする人もいる。翁長さんのようにひとの意見を聞きながら対応している人もいる。

 コンピテンシーなど難しい言葉が出てくるが、分かりやすい言葉で議論していく必要があると思う。

 アウシュビッツについての記憶が忘れることが一番怖い。上だけに振り回されず、足元を見ながら、地域住民の声に耳を傾けながらこれからも話し合っていきたい。

 

綿貫

 夏のセミナーの紹介。ブラックバイト、奨学金をテーマに考え合っていきたい。