201984日 全国進路指導研究会 夏のセミナー まとめ

 

                   会場;獨協中学校・高等学校 会議室にて

 

 

講演:「ワークルール教育推進法制定に向けた取り組み」

           市橋耕太 弁護士(日本労働弁護団本部事務局次長)

 

1.日本労働弁護団ワークルールPTについて

(1)  日本労働弁護団とは

労働者・労働組合の権利擁護を目的とする弁護士の任意団体。全国に1700人以上の会員がいます。

(2)  ワークルールPT

ア: ワークルールPTについて

   国が責任をもって労働教育の推進を行うべきであるとの考えに基づき、ワークルール教育推進法の制定を求めることを主たる活動として、20134月に設置されました。

労働者も使用者もすべての人にワークルールをしっかり教育する必要があると考えています。ワークルール授業の実践(出張授業とそれに伴う授業内容の研究など)も行っています。ワークルール授業の申し込みは、日本労働弁護団のホームページからできます。http://roudou-bengodan.org/

  イ: ワークルールPTの取り組み

   *2013104日「ワークルール教育推進法の制定を求める意見書」を発表。

   *20151225日 厚生労働省に「ワークルール教育の推進に関する法律制定に関する要望書」を提出し、法案の検討を要請。その後、省内で記者レクも行い、朝日新聞・毎日新聞・中日新聞等により報道される。

   *201621日「ワークルール教育の推進に関する法律案(第一次試案)Ver.2」を発表

   *2017217日日弁連(弁護士全員が加盟している)が、「ワークルール教育推進法(仮称)の制定を求める意見書」発表

   *2018227日 非正規雇用対策議連(与党を含む超党派の議員連盟)と市民集会実行委員会との共催で「ワークルール教育推進法の制定を求める市民集会」を参議院議員会館で開催。

 

2.日本労働弁護団の立法提言について

 日本労働弁護団が求めるワークルール教育推進法のポイント

*一日の労働は8時間を超えない、週に40時間を超えないなどの知識教育のみではなく、実際に役立つ教育であること。例えば、権利を知るだけでなく行使するための訓練も必要だと考えており、労働者と使用者のパワーバランスを是正するための団体である労働組合の活用も積極的に教える必要があると考えています。そのためには、権利や労働現場を知る者が教育に関わる必要があります。

また、労働契約の義務や自己責任の側面が過度に取り上げられないようにするべきとも考えています。

このような観点から、以下の基本理念を条文に明記することを求める提言内容となっています。

【試案第3条参照】

    ワークルール教育は、労働者と使用者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差の存在を前提として、労働者及び使用者がそれぞれの権利及び義務について正しく理解するとともに、労働者が自らの権利又は利益を守る上で必要な労働関係法制等に関する知識を習得し、これを適切な行動に結び付けることができる実践的な能力が育まれることを旨として行われなければならない。

 

  次に、その教育を行うにあたって、学校では先生が主要な担い手ですが、多くの先生方は、企業での労働を経験したことがない方々です。そこで、企業現場を知っている人や知識を持っている弁護士が、ワークルール教育を担うことを考えています。あるいは、学校に限らず様々な場面でワークルール教育が行われるべきであると考えています。それが、②です。

    ワークルール教育は、学齢期から高齢期までの各段階に応じて、学校、地域、家庭、職場その他の様々な場の特性に応じた適切な方法により行われるとともに、それぞれの段階及び場においてワークルール教育を行う多様な主体の連携を確保して効果的に行われなければならない。

 

  ワークルール教育を行うにあたっては、特に労働者の権利や利益が守られることを大事にしないといけないと思っています。例えば、キャリア教育という名前で「どういう風にしたら会社に入れるか」ということばかりを熱心に教えているところもあります。本来のキャリア教育とは違ったものになっている例です。ワークルール教育がそのようなものにすり替えられないようにしたいと思っています。

    ワークルール教育の推進にあたっては、労働者の義務や自己責任が安易に強調されることによって労働者の権利又は利益が不当に損なわれることのないよう、特に留意されなければならない。

 

3.ワークルール推進法(案)について

(1)法制定の情勢

  20171130日、非正規雇用対策議連2017年度第2回総会が開催され、ワークルール教育推進法案(別紙)が承認されました。その後、各党に持ち帰られ、その承認が得られれば、2018年通常国会にて提出・成立する見通しでしたが、残念ながら法案提出とはならず、現在に至っています。

 

(2)ワークルール教育推進法案の内容

  ワークルール教育推進法案は、まず基本理念として以下の項目を挙げています。

 

基本理念(第3条)

*ワークルール教育を受ける者の将来にわたる充実した職業生活を営むことができる働き方の実現に資することを旨とすること。

*使用者及び労働者が、遵守すべき労働条件の基準等に関する法令並びに労働契約に基づく権利及び義務に関する理解を深めることにより、健全な労使関係の下で持続的に発展することができる企業の健全な事業活動の促進に資することを旨とすること。

*労働者が労働に関する権利侵害等に対する実践的な救済方法に関する知識を含むワークルールに関する知識を習得することのできる環境の整備が図られること。

*使用者がそのワークルールに関する知識の向上を図ることのできる環境の整備が図られること。

*学齢期から高齢期までの各段階に応じて体系的にワークルール教育が行われること。

*学校、職域、地域、家庭等の場の特性に応じた適切な方法により、かつ、それぞれの場におけるワークルール教育を推進する多様な主体の連携を確保しつつ、効果的にワークルール教育が行われること。

 

これらの基本理念自体は、先ほど述べた日本労働弁護団試案の基本理念と照らしても、概ね評価できるものと考えています。

そして、この基本理念に基づいて、国・地方公共団体のワークルール教育推進に関する施策策定の責務を規定し、財政上の措置を講ずることを規定しています。

事業を行うのには、財政上の措置はとても大事で、過労死の啓発事業には、財政上の措置がきちんと講じられています。それと同じような財政上の措置を得たいと考えています。

そのほか、「ワークルール教育推進会議」「ワークルール教育推進専門家会議」や、地方公共団体に組織される「ワークルール教育推進地域協議会」などの会議体において、ワークルール教育の実践が充実されることを期待しています。例えば、我々のような弁護士や、あるいは労働組合の方など、労働法や労働現場に詳しい人物をこのような場に組み入れてもらえると良いと思います。

 

4.今後の見通し

(1)法律制定の後押し

  現場からの声を届けること。

  ブラック企業が数多く存在する中で、学校卒業後の自分たちの教え子がどうなるか気にされている先生方は多いです。そんな現状だからこそ、ワークルール教育がいま、必要だという現場の声を届けられたらと思います。

(2)法律制定後を見据えた取り組み

  厚生労働省は、法律制定を見据えて、高校生向けのワークルール教材を発表しました。モデル授業案として「『はたらく』へのトビラ~ワークルール20のモデル授業案~」を2017年に。同年9月から11月にかけて全国10か所で高校教員向けのワークルールに関するセミナーを開催。続けて、20184月には、大学生向けの教材として「『働くこと』と『労働法』~大学・短大・高専・専門学校生等に教えるための手引き~」を発表し、全国の大学などに配布しました。教員などに向けたセミナーもたびたび開催しています。

 私たち日本労働弁護団でも現場の先生方が利用できる指導案や教材を作成中です。いずれホームページにも掲載したいと思っています。私たちの方は、もうすこし権利行使に重きを置いた指導案です。使えるものにするために、是非、ご意見をいただきたいと思っています。

 

5.授業実践―別紙

指導案・授業の流れ・グループワーク用設例・グループ用ワークシート・設例の解説

*働くルールを身近なものとして捉えてもらう。

*単に知識を教えるだけでなく、権利を行使させる練習をさせる。

以上の2点をポイントとしての指導案。

 

6.教員の労働問題について

先生方は、労働者としての意識を高く持っている人は少ない。公立の先生方には、給特法の関係もあって長時間労働しても残業代が支払われない。私立の先生方も、これに合わせられてしまっているケースが多い。サービス残業を当たり前にやっている先生方が、生徒たちに「声を上げていい」と教えることには困難が生じるかもしれません。

教員の働き方が改善されてこそ、ワークルールが実のあるものになると思いますし、逆に、ワークルール教育を通じて教員自身も自らの働き方を見直すきっかけにしてほしい。

ワークルール教育と教員の働き方改革を車の両輪のように同時に進めることで相乗効果が得られると思います。

 

【質疑応答】

Q:国会提出への見通しは?

A:今の段階では何とも…。官僚の皆さん、教員の皆さん、みんなでこの法案が必要だという方向が必要ではないかと思います。

Q:「ワークルール」という言葉の選び方がとてもいいと思うけれど、どうしてこの言葉を選んだのですか?

A:例えば「労働法教育」ということだと知識を教えるイメージになってしまうが、権利行使などの実践的な教育を狙っている。あるいは、キャリア教育の分野にも関わっているので、広い概念としてワークルールという言葉になりました。

Q:ワークルールの授業は、どんな単位でやるのでしょうか?いま、学校で持ち込みの授業としてやられているのは、「薬物乱用」「SNSのこと」など。これらが3年間に一回順番に入ってくる。何時間くらいを想定しているのか。ビデオ教材があるといい。

A:1年に1回ぐらいはワークルールの授業を受けてほしい。定着率が上がると本田由紀教授の報告にもあるので。困ったときにどこに相談すればいいか、弁護士、労働組合、労働基準監督署などの存在を知ることも大事。少人数のほうがグループワークをするにはいい。動画のことは私たちも検討しているところです。

 

                   (文責:全進研世話人 荻野 佳津子) 

 

 

報告① 「命と暮らしを守る」~家庭科で考える「労働問題」~

                                                                                   鈴木博美(私立高校)

 

1.はじめに

・高校2年生の選択「家庭科」で、3学期に行った授業の報告である。

・第4回目の授業に弁護士と過労死遺族の方を外部講師として招き、日本の労働問題の現 状やワークルールなどについて話して頂く時間を位置づけた。

・外部講師は、2016年から始まった厚生労働省委託事業(学校への講師派遣事業)である 「労働問題・労働条件に関する啓発授業」より、玉木一成弁護士(過労死弁護団)と

 工藤祥子さん(神奈川過労死等を考える家族の会)に来ていただいた。

 

2.授業の流れ(2018年度)

 1.働く人の命と暮らしを守る

 1)DVD「働く人の命を奪う“過労死”」(NHK番組・プロフェッショナル)

  ①電通・高橋まつりさんの過労死事件(2015年)、②過労死と闘う、川人博弁護士

   ③電通・大嶋一郎さんの過労自殺事件(1991年)、

  ④オリンピック会場建設現場で23歳男性の「過労自殺」

 2)日本国憲法を読む(憲法14条)

 3)感想の交換

 2.高橋まつりさんはなぜ亡くなったのか?

 1)高橋幸美・川人博著「過労死ゼロの社会を-高橋まつりさんはなぜなくなったの   か?」(連合出版)を読む。

   ①遺族と初めての面談、②2000年電通事件判決、③労働時間を遺族に隠ぺいしよ

   うとした会社、④励ますどころか悪態をつく上司、⑤深夜にわたる接待業務指導

   ⑥うつ病を発症して理性的な判断ができなくなり、⑦労災認定から記者会見へ

 2)感想の交換

 3.ワタミの過労自殺はなぜ起こったのか?

 1)中澤誠・皆川剛「検証 ワタミ過労自殺」(岩波書店)を読む

   ①森美菜さんの遺書、 ②労働法制の規制緩和とワタミ事件

 2)「はたらく人へのインタビュー」

 3)東京新聞記事『「過労死110番」30年』

 

 4.玉木一成弁護士・工藤祥子さんのお話しを聞く

 1)「ワタミ裁判」番組を視聴

 2)玉木弁護士「労働ルールを知って、働きすぎ社会から命と健康を守る」

 3)工藤さん「働くルールを知ろう! 命より大切な仕事はありません!」

 3)質問・感想

 

 5.過労死と過労自死

 1)工藤さんに関する新聞記事を読む

   朝日新聞「STOP!過労死 熱血先生の魂継ぎ闘う」

 2)過労死・過労自死にかかわる労災請求件数の推移

 3)若年層に多発する過労自殺

 4)過労死防止対策推進法の概要

 

 6.声をあげる若者たち

 1)DVD「もう泣き寝入りはしない!立ち上がった“働く若者たち”」

①長時間労働、パワハラで体や心を壊す若者、②ブラック企業と闘う

②おかしいことに、おかしいと声をあげられるか

 

  

 1.働く人の命と暮らしを守る。

DVD「働く人の命を奪う“過労死”」(NHK放映番組「プロフェッショナル」2017年) を視聴した。

・内容は、川人博弁護士の活動を中心に取り上げられており、視聴後の生徒たちの反応は、 「このような立場にたって闘ってくれる人がいるのだ」という安堵感だった。

・生徒たちは「社会に出ること」や「働くこと」に希望がもてず、将来に対して不安をもっているように思う。

 

2.高橋まつりさんは、なぜ亡くなったのか?

・高橋幸美・川人博著「過労死ゼロの社会を-高橋まつりさんはなぜなくなったのか?」 を読んだ。

・資料を読みあった時、生徒からは、「子どものいじめよりひでーじゃん!!」という声や、「なぜこんなにひどいことができるのか?」という疑問の声があがった。

 

3.ワタミ過労自殺事件はなぜ起こったのか?

・事前に「働いているおとなにインダビュー」をしてもらう宿題を出した。

・中澤誠・皆川剛「検証 ワタミ過労自殺」を読んだ。

・生徒たちにとって「労働問題」は、自分の親や働いているお兄さんなどの働き方を通して考えているようであった。

 

4.玉木先生、工藤さんからお話を聞く。

・工藤さんからは、娘さんの高校生時代の様子なども交えながら話していただいた。また 工藤さん自身の家族の会としての活動についてもふれて頂いた。

・ご遺族当事者としてのお話は、生徒にとってとてもリアルに響き、自分事に引き付けて 考えているようだった。

・玉木先生からは、日本の労働の実態と諸外国との比較、働くことに対する意識の違いなどについて話して頂いた。

・お2人とも生徒の目線に合わせ、一人ひとりの生徒の質問に丁寧に答えて下さり、生徒にとって良い学びの機会となった。

5.過労死と過労自死

・過労死・過労自死に関わる労災件数の推移をグラフにより確認した。年齢別分布から、 20歳代、30歳代、40歳代が過労死よりも過労自死が多く、50歳代、60歳代は、過労死 が多いことを確かめた。

・過労死等防止対策推進法は、「国の責務」が明記され、過労死等の防止のために講じた状況に関する報告の義務、また過労死等の防止のための対策として「啓発」を行うことが定められていること。また今回の授業は、この法律により予算が出ていることから実現できていることを説明した。

・過労死等防止対策推進法の制定は、過労死遺族の方々やそれを支える弁護士の方々によ る長い間の運動による成果であることも確かめた。

 

6.声をあげる若者たち

・番組「もう泣き寝入りはしない!立ち上がった“働く若者たち”」を視聴してブラック企業を相手に闘う働く若者たちと、POSSEの活動などを見た。

・生徒たちには、自分の意見を言ったり、声をあげていくことで、自分の周囲や社会を変 えていける可能性があることを見てもらいたかった。

 

  

3.最後に

・生徒たちには工藤さんのお話しや言葉が強く残っており、当事者からの声がより生徒た ちに届くのだと思った。

 

・生徒の感想を読むと、高校生の感性の鋭さには驚かされる。生徒たちの豊かな感性を大 切にした授業を行いたい。

 

 

 

 

報告② 「若者の働く現場から」

           瀬戸ひいらぎ(首都圏青年ユニオン執行委員:デザイナー)

 

1,自己紹介

・ 高校の頃からアルバイトを始めた。その頃からワークルールに対する疑問を感じた。オーナーや店長の言うことを聞かないとやめさせられたりということが横行。

  世代としてはロスジェネ。卒業時期に超氷河期で就職難、バブル崩壊、リーマンショックと派遣社員にもなれず、なかなか仕事に就けない20,30代。パワハラセクハラ当たり前。自分の意見を言えば「言うこと聞けないならやめていいよ」、そんな繰り返しで仕事のできる環境から遠ざかり引きこもり状態に。

  ハローワークでサポートステーションを知る。表に出ることから始めて段階を経て就職に到るも、再びひどいパワハラにあう。月に7㎏も体重が落ち、病気にもなり聴力も失う。困りはしたのもの、怖くてどこにも相談できないなか、急性気管支炎で会社で倒れそうになる。「倒れるなら家で倒れろ」といわれて帰宅、救急車をよんでそのまま入院。入院明けに会社に呼び出され、退職届を強制的に書かされる。どうしても納得できずサポートステーションに相談すると、首都圏青年ユニオンを紹介され、加入。

  現在はフリーでデザナー 首都圏青年ユニオンの執行委員をしている。

 

2,組合はなにができるか

労働組合の強みは、多くのスタッフでサポートしてくれるところ。一人で会社に立ち向かっても門前払いをくらうだけ。労基署も忙しすぎて動きが取れない現実。個人では弁護士も頼りにくい。お金もかかる。

組合は相談から始まり、一緒に行動してくれるので安心。心強い。弁護士では行使できない権利も持っている。団体交渉も会社は断れないなど多様な闘いができる。

 

3,    「ワークルールの教育が必要」と考える理由

    そもそも、アルバイトが16歳からできるのに、働き方について何も知らない、教えられていない。会社と面接し契約書を交わすが、契約上の対等な取り決めがない、それに対しての予備知識もこちらは持っていない。おかしな条件だけ提示され一方的に守らされる。やめさせられるのが怖くておかしいと言えない。

    組合が労働者と雇用者が対等であることを教えてくれた。現実には雇用者が優位になっているが、それを対等に戻すのが労働組合の役割だと思っている。自分の問題が解決した後も、労働法講座などの勉強会を開いて、理解を広めるようにしている。何が問題か、どう対処するかなどを学習している。実際に行動するためのロールプレイ、模擬団体交渉などで疑問に思うことについて声を上げやすくする練習をすることで、会社と自分の働きやすさを求めていけるのではないか。

③いま首都圏青年ユニオンで取り組んでいる問題

・大学生のバイト問題 授業に出られないほどシフトを入れられてしまう。賃金の不払いがある。バイト中の「不備」(食器を割ったら給料から引かれる、レジの金額があわないと補填させられるなど)を追求されたり、給料に見合わない正社員なみの労働を求められる。

・アシックスなど複数の会社でのパタハラ問題(男性が育児休暇を求めたら閑職に追いやられた)、オートバックスでの待遇改善をもとめる訴訟(非正規も正規社員なみに払うものを払ってほしい) 

 

4,後押しするのが労働組合

   会社が守るべきことを守らないがために問題が起きているが、私たちは法と現実の乖離にたいしてなかなか声を上げられない。自分の身に起きたときに何もできない。大きな会社しか取り上げてもらえないのではないかと思っていたりする。小さな会社では労働組合のないところも少なくない。

自分の場合、バイトを含め100人程度のパチンコ店だったが、組合の応援を受けて団体交渉、東京都の斡旋で労働審判を受けて解決。解決金をうけとった。しかし、これは本来自分がもらえるべき金額を取り戻せただけ(不払いや不当解雇)。ありがたく「いただく」というお金ではないはず。本来払うはずの残業代をけちって、これを払ったらつぶれてしまうという会社なら、そんな会社はつぶれてしまえと思う。人の命ってなんだろうと思う。彼らのせいで私は聴力を失い、身体を蝕まれ、いまもふつうの生活が送れない。人生を奪われたという気がする。彼らが何も考えずに今日も笑っていると思うとすごく悔しいと思った時期もあった。こういったことを一件一件つぶしていかないと対等な関係が作れないというのは悲しいことだが、一気に解決することはできない。どうしたらいいのか、もどかしいと思うこともある。裁判は敷居が高いが私の場合はやれるところまでやってみようとやってみた。また泣き寝入りして同じことをくり返したくなかった。

(立場の弱い)ロスジェネとして、セクハラやパワハラなどを笑ってごまかしてこなければならなかった者として、こんなことはもう後の世代に受け継がせたくないという思いがとても強い。もしそう言う目にあっている人がいたら一緒に解決していこうと。どうか諦めないで声を上げてほしい、死んでしまう前に。私は会社で倒れてドロップアウトしたためにやめることができたが、あのまま会社にいたら死んでいただろうなと思っていた。

 

5,死ぬか倒れるか 

「逃げる」ことに「恥ずかしさや後ろめたさ」はいらない。

「甘えること」と「頼ること」とは違う。

組合に入るときに言われたことで自分の中に深く残っている言葉として「間違えたやり方でやり返すとそれがまた戻ってくるから、正しいやり方でやり返しましょう。」というのがある。それと「風邪を引いたら病院に行くように、会社で困ったら労働組合に行くのが当たり前というようになってほしい。」とも言われた。

労働組合のイメージが「激しいもの」というのがあるようだが、今は全く違う、と思う。正規非正規、パート、アルバイトでも個人加入の労働組合があるので、逃げ場所の一つとして労働組合が頭の片隅にあってほしい。逃げることは恥ずかしことではないし、だれかに相談することも恥ずかしいことではない。追い詰められて精神疾患にかかるのも、自分が弱いからとかではない。それは、医学的に証明されている。精神科も頼る場所の一つとして捉えてほしい。「食べること」と「眠ること」が不自由になったときはすでに「頼るとき」だと経験的に思う。

   労働組合は、ただ権利を求めて戦う団体ではなく命を一緒に守っていく仲間、頼るところだと思ってほしい。

 

6,講演会でよく受ける質問

ブラック企業の見分け方は?→ それがあれば私は今ここにいません(笑)

ハラスメントの基準はあるのだが、感じ方が人様々。これってどうなんだろうと思ったときに相談できる場所があると言うことを知っておいてほしい。

「法テラス」「○○ホットライン」「精神科の病院」など

 

 アナウンスとして

「ポケット労働法」東京産業労働局で配布している冊子。やさしく書いてある。手もとに一冊おいて眺めてみるだけでもよいと思う。

 

学校からも講演依頼があれば私たち首都圏青年ユニオンも、ほかの労働組合もよろこんでお話にいきます。